「うちもそろそろネット販売やったほうがいいかな」「観光で来てくれた方が、帰ってからもまた買えるようにしたい」。沼津港・内浦・西浦の干物屋さん・水産加工屋さんから、最近こうしたご相談をいただきます。
結論から言うと、いきなり Shopify などの本格ネットショップを契約する必要はありません。干物や冷凍水産加工品はネット販売のハードルが他業種より少し高い商品です。だからこそ、HPの段階でできることを先に整え、無理のない順番で進めるほうが体力を残せます。
いきなり「ネット販売」に飛び込まなくていい理由
ネット販売を始めようとすると、まず Shopify・カラーミーショップ・BASE・STORES といったネットショップサービスの名前を耳にします。月額が安く申し込みも簡単なので「とりあえず契約してみよう」と進みがちです。ただ、干物・水産加工の商品には、先に知っておきたい壁が三つあります。
一つ目は送料です。常温の焼き菓子と違って、干物や冷凍品はクール便での発送が基本になります。1配送あたりの送料が高くなりやすく、商品単価が低いと利益の多くが配送費で消えてしまいます。
二つ目は冷蔵冷凍の手間です。保冷剤や発泡スチロールの梱包資材費、配送業者との契約、温度管理の責任は、月額料金とは別に、地味に時間とお金を取っていきます。
三つ目は贈答対応です。水産加工はお中元・お歳暮・内祝いといったギフト需要が大きい商品です。のし、メッセージカード、配送日指定、複数の届け先──こうした仕組みは、最初からネットショップ側に揃っているわけではありません。
これらは「やってはいけない理由」ではなく、順番を間違えると痛い理由です。先にHPで土台を整え、注文の流れが見えてからネットショップに乗せ換えるほうが、早く軌道に乗ります。
まず作るべきは「商品ラインナップが見えるHP」+「電話・FAX注文受付」
意外に思われるかもしれませんが、地元密着で長くやってこられた干物屋さん・水産加工屋さんなら、ホームページ1枚と電話・FAX注文だけで十分商売になるケースが多いです。実際に、沼津港・内浦・西浦のお店では「観光で来た方が宿に戻ってから店のホームページを開き、電話で追加注文を入れる」という流れがすでに起きています。
このときホームページに必ず載せておきたい項目は、次の4つです。
- 商品ラインナップ ── アジ・サバ・金目鯛・ホタルイカ・しらす・地魚の干物詰合せなど、定番を写真と名前、ひと言の紹介で一覧に。
- 価格と内容量 ── 1パックの量・枚数・グラム数と税込価格。詰合せなら中身の構成も。
- 送料の目安 ── 地域別のクール便送料の目安。最低注文金額があれば明記。
- 連絡先 ── 電話番号(タップで発信できるよう設定)、FAX番号、営業時間、定休日、所在地。
「これだけで売れるのか」と聞かれますが、観光客のお取り寄せは「『誰から』『何を』買うか」が決まった注文です。電話一本・FAX一枚で完結するほうが、お互いに気楽な場面も少なくありません。注文が増えてきたら次の段階に進めば十分です。土台だけ整えたい場合は 月額0円のHPプラン でカバーできます。
食品をネットに載せるなら、まずここの表示を整える
ネットショップを契約する前であっても、ホームページ上で商品の写真と価格を見せて電話注文を受ける時点で、食品事業者として押さえておきたい表示の決まりごとがあります。難しく感じるかもしれませんが、要点はそれほど多くありません。
容器包装に表示する「食品表示法」の基本
真空パックや化粧箱など容器包装された加工食品(干物・冷凍水産加工品など)には、食品表示法に基づいて以下のような項目を表示することが基本になっています。
| 項目 | 内容の例 |
|---|---|
| 名称 | 「あじの干物」「金目鯛のみりん干し」など、その食品の内容を表す名称 |
| 原材料名 | 使用した原材料を重量順に。アレルゲンも併記 |
| 添加物 | 使用している場合は重量順に。原材料と区分して表示 |
| 内容量 | 1パックの重量、枚数など |
| 消費期限/賞味期限 | 品質の劣化が早いものは消費期限、比較的長持ちするものは賞味期限 |
| 保存方法 | 「要冷蔵 10℃以下」「要冷凍 −18℃以下」など |
| 製造者など | 製造者の氏名または名称、住所 |
| 栄養成分表示 | エネルギー・たんぱく質・脂質・炭水化物・食塩相当量 |
これらは 容器包装そのものへの表示が基本 ですが、ネット販売の商品ページ側にも同じ情報を載せておくと、お客様が買う前に判断しやすくなります。消費者庁の「インターネット販売における食品表示の情報提供に関するガイドブック」にも考え方が示されています(参考文献参照)。
「沼津産」とHPに書くときの注意点
商品名に「沼津産」「駿河湾産」と書きたくなる場面は多いですが、少しだけ慎重に。加工食品の原料原産地表示制度では商品の主原料(重量比1位)の産地を表示することになっており、主原料が他地域や外国産の魚の場合に「沼津産」と単純表記すると、景品表示法上の優良誤認にあたる可能性があります。
沼津で加工しているが原料は他地域・外国産という場合は、「沼津加工」「○○産(沼津で干物に仕上げ)」のように 産地と加工地を分けて表現 しておくと安心です。店で長く使ってきた言い回しを、HP公開時にひとつずつ確認しておきましょう。
表示の整理が不安な場合は、雪工房でも 無料相談 でご一緒に確認しています。
観光客のリピート購入を取る「お取り寄せ導線」の作り方
ネット販売の本命は「東京・神奈川・愛知あたりに帰ってから、もう一度買ってくれる観光客」です。この導線は、店頭のちょっとした仕掛けで太くなります。
まず、店で渡す紙袋・パンフレット・名刺サイズのカードに、ホームページのQRコードを刷っておきます。お客様が宿や自宅で読み取れば、商品ラインナップと電話番号にすぐ辿り着けます。
次に、ホームページのトップには「電話で注文」を大きく置きます。観光客は土地勘もメニューも分かっているので、凝った新規向けセットより、電話番号と営業時間を画面の上のほうに大きく出すだけで効きます。
そして、季節限定の商品はこまめに載せます。金目鯛・ホタルイカ・しらすの新物などを写真とひと言で紹介すれば、「あの店、いまこれが旬なんだ」とお客様に伝わり、電話をかける理由になります。
世界観の参考としては、「季節を切り取って届ける」設計の和菓子店 菓子處 月乃雫|TSUKI NO SHIZUKU や、手仕事の少量生産を丁寧に見せた ふわりや|funwariya のデモが近いです。他の業態は 制作例ページ をご覧ください。
段階的に始めるロードマップ(3ステップ)
ここまでお話しした内容を、実際に進める順番に並べ直すとこうなります。
| ステップ | やること | かかる手間 |
|---|---|---|
| STEP 1 | 商品ラインナップと電話・FAX注文を載せたHPを公開(今日からできる) | ★☆☆ 小さく始められる |
| STEP 2 | 注文用フォーム(Googleフォームなどの簡易版)を追加。受注のメモを残しやすくする | ★★☆ 数ヶ月後でも遅くない |
| STEP 3 | Shopify・カラーミーショップ・BASEなど本格的なネットショップに移行。決済・在庫・配送を一本化 | ★★★ 注文が安定してから |
お店の規模や観光客比率によっては STEP 2 で十分なこともあれば、ふるさと納税や法人ギフトを本気で取るなら STEP 3 まで進む価値もあります。大事なのは、いまの自店の体力に合った段階から始めることです。STEP 3 で検索・AI検索からの集客も狙うなら AIO/SEO HPプラン が選択肢になります。
+αで知っておきたい法令の話
通信販売の表記(特定商取引法)
ネットショップを契約する前であっても、ホームページから注文を受ける時点で、特定商取引法における通信販売の表示義務に近い世界に入ります。「特定商取引法に基づく表記」のページに、次のような情報を分かりやすく書いておきましょう。
- 事業者名(屋号と代表者氏名)・所在地・電話番号
- 販売価格と送料、その他の費用(クール便代・代引手数料など)
- 支払方法と支払時期(代引・銀行振込・後払いなど)
- 商品の引渡時期(注文後何営業日で発送されるか)
- 返品・交換の条件(食品なので「お客様都合の返品不可」とする場合も、その旨を明記)
後にネットショップ(Shopify など)に移行するときも、ここで作った「表記」のテキストはそのまま使えます。最初に整えておくほど後が楽になります。
営業許可(食品衛生法)
自社で魚を仕入れて干物に加工し販売する場合は、保健所から「水産製品製造業」など該当業種の営業許可が必要です。容器包装された鮮魚介類の販売だけなら届出で足りる場面もあり、判断が分かれます。HP公開前に所管の保健所(沼津市内なら 静岡県東部健康福祉センター)へ確認しておくと安心です。
※ 法令のお話はあくまで執筆時点(2026年5月)の概要です。実際の運用前には必ず、消費者庁・農林水産省・厚生労働省・所管自治体の 一次情報 をご確認ください。記事末尾に出典URLを掲載しています。
雪工房ができるサポート
雪工房(SNOW WORKSHOP)は静岡県東部を中心に、買い切り型・月額0円のホームページ を制作している小さな工房です。沼津港・内浦・西浦の干物屋さん、水産加工屋さんからは、こんな相談をいただいています。
- 「商品ラインナップを写真と価格で見せたい。あとは電話で注文を受ける形でいい」
- 「ふるさと納税の入り口になる、ちゃんとした自社サイトを持っておきたい」
- 「いきなりネットショップではなく、まず HP 1枚から始めたい」
沼津市内全域・内浦・西浦・戸田・原まで対応しています。打ち合わせは Google Meet または LINE のオンラインで30分から。詳しくは 沼津市の対応窓口ページ と HPプラン をご覧ください。
よくあるご質問
Q. いきなり Shopify を契約してネット販売を始めてはダメですか?
A. ダメではありません。ただ、干物・水産加工は「冷蔵冷凍配送」「贈答対応」「食品の表示」のハードルが他業種より一段高い商品です。月額料金や決済手数料が積み上がる前に、まずホームページで商品ラインナップを見せ、電話・FAXで注文を受ける形から始めるほうが体力を残せます。実店舗の常連と観光客のお取り寄せが回り始めてから、本格的なネットショップに移行するのが現実的です。
Q. 「沼津産」とホームページに書いて大丈夫ですか?
A. 原料となる魚が沼津で水揚げされたものであるなど、原料原産地表示の基準を満たしている場合に限り表記できます。外国産や他地域産の魚を沼津で加工した場合は、産地と加工地を分けて書くなど誤解されない表現が必要です。最新の運用は消費者庁・農林水産省の一次情報を必ずご確認ください。
Q. 干物をネットで売るのに営業許可は必要ですか?
A. 自社で干物を加工・製造して販売する場合は、保健所から「水産製品製造業」など該当する営業許可を取得しておく必要があります。容器包装された鮮魚介類をそのまま販売するだけであれば届出で足りる場面もあります。ネット通販を始めるための追加許可は基本的に不要ですが、判断が分かれる場面があるため、所管の保健所に事前確認することをおすすめします。
参考文献・一次情報
本記事の法令まわりの記述は執筆時点(2026年5月)の公的情報をもとにしています。実際の運用前には必ず最新の一次情報をご確認ください。
- 消費者庁 — 食品表示法
- e-Gov 法令検索 — 食品表示基準
- 消費者庁(令和4年6月)— インターネット販売における食品表示の情報提供に関するガイドブック(PDF)
- 農林水産省 — 加工食品の原料原産地表示制度
- 消費者庁 特定商取引法ガイド — 通信販売
- 消費者庁 特定商取引法ガイド — 通信販売広告について
- 厚生労働省 — 食品衛生法 営業許可業種一覧(PDF)
- 静岡県 東部健康福祉センター — 営業許可・営業届出
- 消費者庁 — 景品表示法
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